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電気自動車の5つの課題と未来

電気自動車にはおおまかに5つの課題があるといわれています。ひとつめは価格の課題、ふたつめはバッテリー生産と寿命の課題、みっつめは航続距離の課題、よっつめはインフラ整備の課題、そしていつつめは国際情勢の課題です。日本がこれから電気自動車の普及率を引き上げていこうというのであれば、これら5つの課題について理解したうえで、その未来像を作り上げていかなくてはいけません。

電気自動車の課題と未来

1 電気自動車の価格の課題

電気自動車がガソリン車と比べて高価格なのはいくつか理由が挙げられます。よく指摘されるのは、リチウムイオン電池などの電気自動車に必要な材料が高いこと、また一つは生産量がまだ少なく生産技術も未発達なことが挙げられます。また、メーカーが電気自動車の低価格化にあまり積極的でないとの指摘もあるようです。
市場原理に従えば、ガソリン車と比べて高価格の電気自動車は普及しにくいです。電気自動車の普及を進めている国では、電気自動車に補助金を出したり、逆にガソリンを高くするなどしてガソリン車の規制を強化したりしています。
電気自動車は規制を強化して市場を制限したり、補助金などを使って市場を操作したりするような、社会主義的な国ほど普及しやすく、逆に自由主義市場の国ではなかなか普及しにいといえるかもしれません。

2 バッテリー生産と寿命の課題

電気自動車の課題はバッテリーの課題と言っても過言ではありません。電気自動車用バッテリーの生産には大量のエネルギーを消費します。バッテリーの生産によるエネルギー消費を含めた生産から廃棄までのトータルの環境への影響を考えると、電気自動車はガソリン車よりも環境に悪い可能性があるとの指摘もあります。
また、電気自動車用バッテリーをつくるにはレアメタルを大量に必要とします。レアメタルの大量消費は大きな環境被害を引き起こすといわれています。環境にやさしいと言われる電気自動車ですが、実はガソリン車よりも環境に有害なのかもしれません。
電気自動車用バッテリーは使用とともに性能が劣化し、使用状況にもよりますが10年ほどで寿命が来るといわれています。バッテリー寿命はクルマの寿命に大きな影響を与えます。現状では電気自動車は、ガソリン車よりも寿命が短いと言わざると得ないかもしれません。

3 航続距離の課題

電気自動車の航続距離はバッテリー性能の影響を大きく受けます。昨今、高性能のバッテリーが開発されるようになったとはいえ、いまだガソリン車よりも航続距離が短いのが現状です。また、バッテリーは使用とともに性能が劣化していきますので、何年も乗っているとだんだん航続距離が短くなっていくと考えられます。
電気自動車は充電に時間がかかります。最近では急速充電により30分ほどで充電できるようになってきているようです。でも、家庭の電源などで普通充電するのであれば数時間かかります。これは、今までガソリン車などに乗り慣れていた人たちにとってはとても長く感じます。ガソリンスタンドで数分で満タンに出来た感覚と比べれば、充電にかかる時間は長すぎるというべきかもしれません。

4 インフラ整備の課題

電気自動車の普及で問題になるのは、充電のためのインフラの不足です。たまに郊外へドライブに出かけたとき、ドライブ先でバッテリーがカラになり、充電スタンドが無ければ立ち往生してしまいます。お出かけするたびに、バッテリーの残量とドライブ先の充電スタンドの場所をチェックしておく必要があります。ガソリン車と比べて、電気自動車は気楽にお出かけしにくい課題があります。

5 国際情勢の課題

電気自動車用バッテリーをつくるにはレアメタルを大量に必要とします。そのため、電気自動車への依存が増えると、レアメタル生産国の政治状況の影響がとても大きくなります。レアメタル生産国が日本に対して敵対的あるいは強硬姿勢になれば、電気自動車生産に大きな悪影響を及ぼすので、相手国のご機嫌を取り続けなくてはならなくなるかもしれません。
電気自動車は現状では、規制を強化して市場を制限したり、補助金などを使って市場を操作したりするような、保護主義的で社会主義的な国ほど普及しやすい傾向があります。電気自動車の普及を増やしていくことは、自ら保護主義的で社会主義的な国になり、自由主義から遠ざかっていくことだといえるかもしれません。
また、日本で電気自動車が普及すると、日本から中古車を買っていた発展途上国が買わなくなると考えられます。電気自動車用のインフラに乏しい発展途上国では、電気自動車を買っても使いにくいのです。電気自動車が国内で増えるようになれば、中古車が輸出されにくくなり、クルマの廃棄も急増して大きな問題になってくるおそれがあります。

電気自動車の未来

電気自動車の最大の課題はバッテリーです。そもそも大きなバッテリーを搭載しなければ、上述のような多くの課題を電気自動車が抱える必要はないかもしれません。
大きなバッテリーを搭載しない電気自動車を、インフラ整備の工夫によって例えば以下のように活用する方法があります。
電気自動車は都市部の公共交通機関、宅配便やルート配送サービス、あるいは地域巡回専門の乗り合いタクシーに限定します。そして、それらの乗り物はトロリーバスのような架線による電力供給、あるいは道路下に埋設した非接触の電力供給システムによって動力を得られるようにします。そうすれば大きなバッテリーを搭載しなくても、電力供給を受けながら走ることのできる電気自動車は都市の物流を支えることができます。
都市部の物流は電気自動車化を進める一方で、インフラ整備を進めにくい郊外では引き続きガソリン車を使用していく方が、政府や消費者の負担も比較的少なくて済みます。
もちろん、都市部ではある程度大規模なインフラ整備が必要になってきます。ただ、少なくとも大きなバッテリーを搭載しなくても走れる電気自動車が都市部で普及できれば、バッテリーの大量生産による諸問題を回避しながら電気自動車を普及できます。
5つの課題のうち、バッテリーとインフラ整備は特に大きな課題であり、これに対する対応によって電気自動車の未来は大きく変わります。今後、どのように時代が変化していくのか、注目したいところです。


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