ホーム>文化>小倉百人一首について>29.心あてに 折らばや折らむ 初霜(はつしも)の おきまどはせる 白菊(しらぎく)の花 凡河内躬恒
小倉百人一首の二十九首目は凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)の歌です。凡河内躬恒は三十六歌仙のひとりで、宮廷歌人として名高いですが、地位はそれほど高くなく生没年不詳で謎のある人物です。この歌は、霜の降りる寒い朝に、白菊の花が見分けつかなくなっている情景を詠んだ歌とされています。
歌の解釈としてはおおよそ、「気まぐれに折るというなら折ってみようか。初霜が降りて見分けがつかなくなっている白菊の花を」です。冬の朝、冷え込んだ朝に庭を見てみると、霜が降りて白菊の花と区別がつかなくなっている、そんな冬の情景を描いた歌とされています。
ただ、凡河内躬恒のこの歌は、そんな情景を単に詠んだ歌ではないのかもしれません。ただ情景を詠みたいだけなら、「気まぐれに折るというなら折ってみようか」などというのはちょっと不自然です。もしかしたらもっと深い、裏の意味があるのかもしれません。実は凡河内躬恒自身の表に出せない恋心を詠んだ歌なのかもしれない。そう思って見直してみるとこの歌もまた違って見えてきます。
藤原定家は凡河内躬恒のこの歌を百人一首の二十九首目に選びました。シンプルでわかりやすい叙景歌かと思いきや、意外と裏の意味がある歌なのかもしれませんから、定家がこの歌を選んだのも深い裏の理由があるのかもしれませんね。