ホーム>文化>小倉百人一首について>31.朝朗(あさぼらけ) 有明(ありあけ)の月と 見るまでに 芳野(よしの)の里に ふれるしら雪 坂上是則
小倉百人一首の三十一首目は坂上是則(さかのうえのこれのり)の歌です。坂上是則は三十六歌仙のひとりで、官位は従五位下とあまり出世しませんでしたが蹴鞠が得意で歌人としての評価も高かったようです。この歌は、吉野の里の明け方に雪が降っているさまを詠んだ歌とされています。
歌の解釈としてはおおよそ、「明け方になって空に有明の月でも出たかと見えてしまうほどに、吉野の里に白い雪が降っている」です。素直に解釈すれば、明け方の吉野の里に白い雪が降っているさまを詠んだ叙景歌だといっていいと思います。
ただ、「ふれる白雪」は雪のように白い肌にふれていることを暗示しているのだという解釈もあるようです。もしかしたら、夜明けの秘めたる恋の暗号が、この歌に隠されているのかもしれません。
藤原定家は坂上是則のこの歌を百人一首の三十一首目に選びました。定家は率直にこの歌を美しい情景を詠んだ歌だとして選んだのでしょうか。それとも、この歌に隠された恋の暗号を知っていて、それを踏まえた上でこの歌を三十一首目に選んだのでしょうか。定家が選んだ小倉百人一首、そこにはいろいろな謎の暗号が隠されているのかもしれません。