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52.あけぬれば 暮るるものとは 知りながら なほ恨めしき 朝ぼらけかな   藤原道信朝臣

小倉百人一首の五十二首目は藤原道信朝臣(ふじわらのみちのぶあそん)の歌です。藤原道信は藤原北家の血筋で、太政大臣・藤原為光の三男です。また、伯父には花山天皇を出家させたことで知られる藤原兼家がいます。恵まれた家柄もあって順調に出世していましたが伯父や父を喪った後、二十三歳の若さで亡くなっています。和歌が上手く後に中古三十六歌仙に選ばれています。この歌は、好きな女性と一夜を過ごした後、夜明けになって別れたくない気持ちを詠んだ歌とされています。

52.あけぬれば 暮るるものとは 知りながら なほ恨めしき 朝ぼらけかな   藤原道信朝臣

歌の解釈としてはおおよそ、「夜が明けたら日は暮れる。それは知っているのですが、それでも恨めしい朝ぼらけだ」です。好きな女性と一夜を過ごし、朝になって出仕するため帰らなくてはならない。もちろん日はまた暮れる。夜になれば好きなあなたに再び逢うことが出来る。それは分かっているんだけれども、今あなたと別れるのがつらい。そんな目の前の女性への愛の深さを感じさせるような歌ですね。
藤原道信さんはきっと愛する女性と素敵な一夜を過ごしたのでしょう。とても素晴らしかったからこそ、いつまでも一緒にいたい、別れたくないという気持ちが強まったのでしょう。でも、朝になったら身支度して、仕事に行かなくてはなりません。いつまでも一緒にいるわけにはいきません。朝廷に遅刻するわけにはいきませんから、急いで帰らなくてはいけないのです。夜になったら再び会うことが出来るとは知りながらも、今は別れるのがつらい。そんなふうに一時の別れを恨めしく思うのも、道信さんの深い恋心のゆえでしょう。
藤原定家は藤原道信朝臣のこの歌を百人一首の五十二首目に選びました。定家さん、とても素敵な恋の歌を選んでくれました。好きになった相手といつまでも一緒にいたい、そう思う気持ちが素直に表現されている好感の持てる歌です。


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