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71.夕(ゆふ)されば 門田(かどた)の稲葉 おとづれて 蘆(あし)のまろやに 秋風ぞ吹く   大納言経信

小倉百人一首の七十一首目は大納言経信(だいなごんつねのぶ)こと源経信の歌です。源経信は宇多源氏の氏族で、平安後期の公家・歌人であり、民部卿であった源道方の六男です。藤原氏ばかりが出世する時代で大納言まで出世するほど才能豊かで、歌もずば抜けて優れていたそうですが、藤原氏が支配する当時の歌壇では評価されにくかったようです。この歌は、田に佇む家に吹く秋風をテーマにして詠んだものです。

71.夕(ゆふ)されば 門田(かどた)の稲葉 おとづれて 蘆(あし)のまろやに 秋風ぞ吹く   大納言経信

歌の解釈としてはおおよそ、「夕方になってくると家の門前にある田んぼの稲の葉が音をたてて、蘆葺きの粗末な家に秋風が吹いてくる」です。秋の夕暮れの寒さ、頭の垂れた稲穂の美しさ、蘆葺きのまろやに秋風が吹いてくるさみしさと、その風景が目に浮かぶような歌ですね。
この歌は貴族たちが山荘に招かれて行われた歌会にて詠まれたものだそうです。経信さん、大納言にまでなった人ですから、「まろや」と呼ばれるような粗末な家には住んでいなかったと思いますが、想像力をかきたてるような美しい歌を詠んでくれました。
藤原定家は源経信のこの歌を百人一首の七十一首目に選びました。あえて源経信の歌を定家が選んだのは、藤原氏ばかりが優先して取り立てられる平安後期の歌壇の評価に一石を投じたかったのかもしれません。地位や知名度、他人の評価に囚われず、歌そのものの良さで選ぶ定家ならではのこだわりがここでも感じられます。


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