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78.淡路島(あはぢしま) かよふ千鳥(ちどり)の 鳴く声(こゑ)に 幾夜ねざめぬ 須磨の関守(せきもり)   源兼昌

小倉百人一首の七十八首目は源兼昌(みなもとのかねまさ)の歌です。源兼昌は平安時代後期の貴族であり歌人で生没年不詳の人です。宇多源氏の氏族ですがあまり出世せず最終官位は従五位下の皇后宮少進で、その後出家しています。歌合によく出詠していたようですが、残っている作品はあまり多くありません。この歌は源氏物語の主人公・光源氏が須磨の地で詠んだ歌を踏まえたものだそうです。

78.淡路島(あはぢしま) かよふ千鳥(ちどり)の 鳴く声(こゑ)に 幾夜ねざめぬ 須磨の関守(せきもり)   源兼昌

歌の解釈としてはおおよそ、「淡路島から通ってくる千鳥の鳴き声に、須磨の関守は一体幾夜眠りを覚まさせられたことだろうか」です。須磨から飛んでくる千鳥が夜中に鳴き声を立てるのでしょう。関所の番人は何か物音がしたので夜中に跳ね起きた、そうしたらただの鳥の鳴き声だった。そんな夜を何度も過ごして、数えられないほど夜中に目を覚ましてきたのでしょう。
この歌は、源兼昌が実際に須磨の関に行って詠んだのではなく、源氏物語の「須磨の巻」を踏まえて詠んだものだそうです。光源氏が須磨の地で千鳥の鳴き声を聞きながらひとり寝する際に詠んだ歌を踏まえているということです。源氏物語に詳しい人ならこの歌を見ただけで、源氏物語の「須磨の巻」を思い起こすのでしょう。
藤原定家は源兼昌のこの歌を百人一首の七十八首目に選びました。歌人としてもあまり有名でなく、それほど出世もしなかった兼昌ですが、藤原定家に選ばれることで現代まで広く知られることとなりました。おそらく定家は源兼昌のこの歌が好きで、特に源氏物語を踏まえて詠んだところを高く評価していたのかもしれません。


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