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80.長(なが)からむ 心もしらず 黒髪(くろかみ)の 乱れて今朝は 物をこそ思へ   待賢門院堀河

小倉百人一首の八十首目は待賢門院堀河(たいけんもんいんのほりかわ)の歌です。待賢門院堀河は平安時代後期の女房・歌人で、生没年や夫の名前などわからないことが多いですが、白河院皇女や鳥羽天皇の中宮である藤原璋子(待賢門院)に女房として仕えていました。、崇徳天皇の譲位後、璋子が落飾するに従って出家したそうです。歌人としての評価は非常に高く、中古六歌仙および女房三十六歌仙の一人に選ばれています。この歌は、男性の心変わりを心配して乱れた黒髪のように心乱れ思い悩む女性の気持ちを詠んだものです。

80.長(なが)からむ 心もしらず 黒髪(くろかみ)の 乱れて今朝は 物をこそ思へ   待賢門院堀河

歌の解釈としてはおおよそ、「あなたが末永く心変わりしないというのは本当に信じて良いのでしょうか。あなたの心がどこにあるのかわからないので今朝の私の心は黒髪のように乱れて、もの思いにふけってしまいます」です。契りを結び、末永い愛を誓った男性が朝になって帰って行って、ひとり残された女性がだんだん不安を感じてきている、そんな女性の気持ちがよく表現されています。「黒髪の乱れ」がエロティックな想像をかきたてる官能的な歌だとする評価もあるようです。
この歌は久安六年(1150年)、崇徳上皇に贈られた「久安百首」にある歌です。その頃には待賢門院堀河さんはすでに出家してますので、おそらく堀河さんの直接の恋愛体験ではなく、むしろ崇徳上皇に捧げるためにお題を決め、技巧を凝らして詠んだ歌と見るべきでしょう。崇徳上皇はこの歌を見て、どのように感じられたでしょうか。待賢門院堀河さんの歌の上手さに感動し、おおいに喜んだかもしれません。
藤原定家は待賢門院堀河のこの歌を百人一首の八十首目に選びました。非常に評価の高い、百人一首に選ばれるべくして選ばれた歌といっていいでしょう。崇徳上皇に捧げられた歌を選ぶことで、定家も崇徳院の魂を慰めたかったのかもしれません。


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